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「外国にルーツを持つ高校生の進路支援勉強会 〜在留資格に関する課題〜」を開催しました

 glolabは、2021年9月4日にZOOMウェビナーにて、「外国にルーツを持つ高校生の進路支援勉強会 〜在留資格に関する課題〜」を開催しました。


開催の経緯

 2021年3月に開催したオンラインセミナー後のアンケートで、「外国にルーツを持つ生徒の進路支援に関する専門的な知識を勉強する場がない。情報交換や勉強できる場を提供してほしい」という声が多くの方から寄せられました。そこで、今回参加者の皆さんから事前に相談事例を募集し、相談対応に必要な知識や相談対応を検討する勉強会を企画しました。当日は、関西、中部、中国、関東地方など全国から50名以上の参加者がありました。

概要

■ 日時:2021年9月4日(日)13:30 – 16:15
■ プログラム:
 第一部:外国ルーツの生徒の進路相談事例検討
 第二部:glolab の活動紹介
■ 場所:ZOOM
■ 参加人数:約50名 *
■ 登壇者:丸山 由紀 弁護士 (東京弁護士会所属)
   西尾 加朋 (glolab)
*関西、中部、中国、関東地方など全国から参加されました。

報告

  【第一部】

参加者のみなさんから事前にいただいた以下の3つの事例を取り上げ、相談対応の検討を行いました。

 ・家族滞在の在留資格を有する生徒が就職する際の在留資格変更手続きについて
 ・公用の在留資格生徒の進路サポート
 ・家族滞在・公用の奨学金取得の課題について

10年ほど前から、家族滞在の在留資格の高校生は、就労が認められておらず、高校卒業後働きたくても働くことができないことが問題としてあがっていました。支援者の働きかけにより2015年に初めて出入国管理庁から通知がでて2回ほど改正をへて、2020年2月の通知で、家族滞在をはじめとする在留資格を持つ高校生は高校卒業後の就職の道が開かれました。現在、家族滞在等の在留資格の生徒は、この通知の要件を満たしていると、住者や特定活動へ在留資格に変更し、働くことができます。丸山弁護士から、その通知と就労可能な在留資格への変更手続きについて、詳しい解説をしていただきました。在留資格変更の要件の一つである就労時間について、参加者の方から実際に入管に確認した内容の共有があり、地域を超えて情報交換をすることで、支援者側も新しい情報や知識を得られることを実感しました。

続いて、西尾から相談対応にあたるときの姿勢、考え方についてお話させていただきました。「法的規定、制度に関しては主観や憶測を交えず、事実を伝えること」「本人の選択を尊重すること」「相談者の価値観を押し付けないこと」などといった留意点は、事後アンケートでも大切な視点を学んだという声が寄せられました。

次に、「進路未決定で高校卒業をした公用の在留資格を持つ若者から、学費をためるためにアルバイトをしたいが、アルバイトができないというのは本当ですか」という相談事例を検討しました。公用の在留資格は保護者が大使館で働いている外国の大使館や領事館、大使(領事)公邸などで働いている人(外交官・領事官以外)と、その家族のための在留資格です。関東圏は大使館が多いため、公用の生徒に出会うことがあるのですが、その他の地域では馴染みのない課題だったかもしれません。まず、丸山弁護士から「住民票がない」など公用の在留資格についての説明があり、法的に資格外活動許可をとって、アルバイトをすることが禁じられてはいないが、実務上は難しく、在留資格変更を目指すのがよいのではというアドバイスをいただきました。次に西尾から実際にglolabで対応した相談事例を交えて対応方法についてお話ししました。「ハローワークで求職をサポートした時、住民票がないので登録を断られた。しかし、入管からの通知を紹介すると、問題なく登録ができた。」という話が印象的でした。支援者が知識を持つことがいかに大切かという一例ではないでしょうか。

最後に、相談がよく寄せられる在留資格が「家族滞在・公用等」の生徒の奨学金受給について検討しました。日本学生支援機構の奨学金が、「家族滞在・公用等」の生徒は、受給対象外となっていたり、自治体が行っている奨学金も自治体によっては申請資格から除外となっていたりします。しかし奨学金受給の可能性がまったくないわけではなく、根気よく情報収集をすることが大切です。一方、奨学金の情報は情報が膨大かつ多言語ではないので、支援者が生徒によりそい伴走することが重要だということ話もありました。在留資格によっては進路選択の壁が多く途中であきらめてしまう生徒もいるかもしれません。あきらめないよう励まし続けることも支援者として大切なことです。

【第二部】

第二部では、代表理事の柴山よりglolabが実施している包括的支援の概要を、コーディネータのファムと人見より進路・キャリア支援動画についてその狙いや動画を使った授業の実践例をまじえて紹介しました。

glolabでは、外国ルーツの高校生や彼らの支援者の方々に活用いただける各種アニメーション動画等の作成とそれらの動画を組み込んだプログラムの企画・実施を行う予定です。詳しくは、イベント情報ページをご覧ください

文部科学省は、「帰国・外国人児童生徒等に対するきめ細かな支援事業」で、高校生に向けた包括的支援を実施項目にあげています。glolabは、全国の専門家や行政、学校と連携し、地域毎の課題も踏まえながら、外国ルーツ青少年を支援する包括的支援プラットフォームの構築に取り組んでいきたいと考えております。



講演資料



報告執筆:柴山